研究課題

原子層/分子集積体ヘテロ界面を用いた機能開拓

研究目的

本研究では、分子およびそのアーキテクチャーの機能を最大限に引き出すための新たな場として、原子層/分子集積体ヘテロ界面に着目する。具体的には、原子層として単層六方晶窒化ホウ素(hBN)を用いた単層hBN/分子集積体ヘテロ界面を対象とし、電気二重層トランジスタ構造を通してヘテロ界面に多量のキャリアを注入することで、種々の分子集積体・配列から新規物性を引き出すことを試みる。hBNは不透過性・絶縁性・安定性という特長をもち、この目的に最適な原子層である。本研究では、ヘテロ界面の作製に適したhBNの成長、ヘテロ界面の作製法の検討、キャリア注入と基礎物性評価を行い、提案するコンセプトを実証するとともに、当該領域にキャリア密度制御を通した物性・機能の自在コントロールを実現する基盤を提供したい。

領域内での役割と必要性

分子の機能を最大限に引き出すためには、分子を作る・配置するということに加え、分子配列の中を動くキャリアの密度を自在にコントロールする必要がある。本申請で提案するhBN/分子ヘテロ構造は、当該領域で生み出される様々な分子アーキテクチャーに適用可能であり、それらのキャリア密度制御を通した物性・機能の自在コントロールを実現する基盤を提供することができる。申請者が所有する原子層物質についての経験・ノウハウと領域で扱われる種々の分子アーキテクチャーが有機的に結びつくことで、分子の合成・配置にキャリア密度のコントロールという次元が加わり、当該領域の発展に資することができると考えている。

研究内容

研究内容は以下のとおりである:(1)大面積・高品質hBN膜の成長、(2)単層hBN/分子集積体ヘテロ界面の作製法の確立、(3)電気二重層トランジスタを用いた界面へのキャリア注入。目的とする構造を作製するためには、穴などの欠陥のない高結晶性の大面積hBN結晶を用いることが必要である。現状で合成に成功しているhBN結晶(グレインサイズが10~40 um)を用いてデバイスの試作を進めつつ、より高品質の大面積hBNを目指した研究をも並行して行う。高品質・大面積hBNを目指した検討では、アンモニアボランを原料として用いたCVD法を用い、hBNのCVD成長に重要な実験パラメータ(原料の供給速度など)の精密制御に立脚したパラメータスタディを行う。デバイスは、有機半導体として一般的なペンタセンなどを用い、hBNを分子へ転写あるいはhBNに分子を蒸着の2通りの方法で試作する。なお、試作したデバイスの評価は、液体電解質としてイオン液体(DEME-TFSI)をトップゲートとして用いた電気二重層トランジスタの特性測定を通して行う。デバイスの作製技術を確立した後には、領域内の他の研究者等共同で種々の分子および分子アーキテクチャーへと展開していきたい。図1.png

追加情報

研究課題番号:16H00963  科研費データーベースはこちら

メンバー

研究代表者:北浦 良(名古屋大学 理学研究科 准教授)

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